2021.01.15
環境
日本のエネルギー事情に深く関わるVPP。知っておきたい概要と注目ポイントを解説
こんにちは、ELJソーラーコーポレーション株式会社です。
ZEH(ゼッチ)やHEMS(ヘムス)など、最近のコラムでは目新しい住宅サービスの話題を取り上げていますが、 今回は「VPP(バーチャルパワープラント)」 について解説させていただきます。VPPは「Virtual Power Plant」の略で、 日本語に訳すと「仮想発電所」 。電力自由化や電力システム改革が進むにつれて、世界中で注目を集めている技術です。
小規模発電設備をIoT技術で統合・制御する
上図出典:経済産業省 資源エネルギー庁『バーチャルパワープラント(VPP)・ディマンドリスポンス(DR)とは』
はじめに、VPPの基本概要を説明したいと思います。
私たちの暮らしに不可欠な電気は、 需要と供給のバランスがコントロール されています。もともと電力の需給調整は、火力発電所をはじめとする大規模発電施設(供給側)で行われてきました。
上図出典:資源エネルギー庁『電気の安定供給のキーワード「電力需給バランス」とは?ゲームで体験してみよう(電力需給緊急対策本部(平成23年3月25日)の参考資料を元に資源エネルギー庁が作成)』
しかし、近年急速に普及してきた太陽光、風力といった再生可能エネルギーは、天候のほか、様々な条件によって発電量が変動。電力を必要としている家庭・ビル・工場 (需要側)に対して供給が少なくなったり、多過ぎたりするなど、 電力が安定的に供給されない ことが懸念点として指摘されてきました。
そこで、家庭・ビル・工場などの需要側が持つ太陽光発電や蓄電池、電気自動車といった複数の小規模発電設備をIoT技術によって統合・制御し、あたかも ひとつの発電所のように地域で機能させる仕組み のことをVPPと言います。
例えると、漫画「ドラゴンボール」で主人公の孫悟空が元気玉をつくる際、一人ひとりから“気”が送られますが、これこそが 需要側の蓄電池などから届けられる電気。 漫画ではそれを孫悟空が束ねていますが、 VPPにおいては、1カ所に束ねるのではなく、電気を必要としている場所(家庭、ビル、工場など)に分散供給する 仕組みです。
VPPは再生可能エネルギーを効率的に使うために有効
VPPは次のようなメリットを持つことから、 “新電力分野”のトピック として注目されています。
1.電力を無駄なく使える
太陽光発電でつくられた電力は、需要がなければ捨てられることになります。ところがVPPでは、地域の中で電力を必要とする場所にうまく供給され、 電力を無駄なく使うことができます。
2.火力発電所の負担と発電コストを削減
現在、日本の電力供給は大規模発電施設に依存していると言えるでしょう。特に火力発電は発電の際にかかる燃料費が高く、経済的とは言えません。一方で、VPPの導入によって再生可能エネルギーの発電元が分散化すれば、 火力発電所の発電負担とコストの削減 にもつながります。
3.災害時の電力の安定供給を維持
電力供給を大規模発電所に依存している日本では、 災害が起きて大規模発電所に異常が発生すると、広域電力障害に発展してしまう可能性 も。しかしVPPによる発電元の増加によって、災害が発生した時にも電力の供給は維持しやすくなります。この 停電という副次リスクを抑えることができる のは、災害大国にとって頼もしい限りです。
4.地球環境負荷低減に貢献
火力発電は発電時にCO2が発生しますが、 VPPはクリーンな再生可能エネルギーを電力として活用 するためCO2の発生の心配は無用。ですから、地球環境の負荷低減にも貢献します。
政府は2018年に「第5次エネルギー基本計画」と題して、日本のエネルギー政策の方向性をまとめて発表しました。そこでは日本のエネルギー事情において、 再生可能エネルギーは今後ますます存在が大きくなる とのこと。となると、再生可能エネルギーを効率的に使えるようになるVPPは、今後さらに注目されていく可能性が高いです。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁『新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?』
VPPの進化・定着には、太陽光発電システムや蓄電池といった関連機器の普及がカギ
前述した通り再生可能エネルギーは、電力の安定供給が難しく、 需給バランスの調整に100%の対応ができていません。 言い換えれば、需給バランスの調整に対応していくことが今後の課題でしょう。
課題解決の足がかりとして、VPPは非常に有効。いっそう進化・定着させるには、 太陽光発電システムや蓄電池といった関連機器の普及がカギ となります。ELJとしても太陽光発電システムや蓄電池を取り扱う会社として、 お客様のVPPに対する理解を促進し、参画していただけけるよう努力していく ことは、大切なミッションだと捉えています。
経済産業省資源エネルギー庁では、 「バーチャルパワープラント構築実証事業」 を行っています。この事業には個人も参加できますが、対象となるHEMS機器を自宅に取り付ける必要があり、リソースアグリゲーターと呼ばれる企業が実施する 実証実験(ご家庭の電力使用状況を見ながら、機器の動作を制御するなど)に協力 しなければなりません。ただし、実証実験に協力すれば補助金が申請できるメリットも。
以上がVPPの基本解説になります。なかなか難しい話題でしたが、ご理解いただけましたでしょうか。
普段、各ご家庭へエネルギーサービスを提案している会社として、日本全体のエネルギー事情に大きく関わるVPPを少しでも多くの方に知ってもらえたらうれしい限りです。